現在、「デング熱」などで蚊に対して敏感になってきています。
というより、今更と言う位などですが、「蚊」は大変危険な生物なのです。
1年間で70万人以上を死へ追いやる超危険生物は意外な生物!?
それがなんと!
「蚊」なのです。
蚊をなめてはいけません。
あなたは、 “人間にとって最も危険な生物” は何だと思いますか?
ライオンや虎などの大型肉食獣でしょうか?
それとも、毒ヘビや毒クモ、サソリなどの毒を持つ生物?
サメやワニという意見もありそうです。
ところが! 人類にとって、最も危険な生物、毎年多くの人間の命を奪っている超危険生物No.1とNo.2は、誰もが知っている意外な生物なのです。
そいつに比べれば、ライオンやサメなんて、「安全」と言えるレベルである。(図を参照)
・被害者の数を視覚化
図は、「特定の生物によって、どれだけの人が1年の間に死へ追いやられているのか?」をまとめて視覚化したもの。
図の中で、最も “危険でははない” 生物はというと……なんとサメとオオカミだ。
この2種によって、毎年10人の人が亡くなっている。
次はライオン、ゾウで、被害者の数は100人。
続けて、カバに殺されたのは500人、ワニは1000人、サナダムシは2000人、回虫は2500人、カタツムリ、サシガメ、ツェツェバエはいずれも1万人、犬が2万5000人、ヘビが5万人である。
・超危険生物No.1は蚊、No.2は人間
危険生物No.2は、なんと人間。
人間同士の殺し合いなどによって、平均して1年で47万5000人の方が亡くなっている。
そして、No.1は「蚊」である。
蚊によって、年間72万5000人もの人が命を落としているのだ。
危険な蚊の代表格はマラリアで、毎年60万人以上が命を落としているそうです。
それ以外にも、2500種類以上の蚊が存在し、テング熱や黄熱病、日本脳炎の媒介者となるのも蚊の一種である。
“人間の命を一番奪っている生物は蚊” と知って、驚いた人も多いのではないだろうか。
そして、2位が人間というのも図を見ていると「危険な生物」について、考えさせられる。
恐ろしい蚊による感染症を挙げときます。
アフリカ、南ヨーロッパ、中東に分布していましたが、1999年以降北米にも発生がみられるようになりました。ウイルスは鳥と蚊の間で感染環が維持され、蚊を介してヒト、ウマなどに感染します。ウイルスに感染した蚊に刺されたとしても、多く(80%程度)の場合、感染はしたものの症状の出ない不顕性感染の形をとり、次に比較的軽い症状を示す通常型がみられ、脳炎や髄膜炎などの重い症状が出現するのは感染を受けた人の1%未満とされています。
ここ1~2年、国内においてもウエストナイル熱(脳炎)が注目されている理由は、1999年のニューヨーク侵入以降、アメリカ合衆国内における流行がその患者数及び流行地域を爆発的に拡大しただけでなく、2002年の大流行では中西部を中心に患者数4,156人、死者数284人、昨年は流行地域がついにロッキー山脈を越え西海岸の州に及んだだけでなく、流行はさらに拡大し9,858人の患者が発生し、262人が死亡するという大流行となったことによります。今年もすでに7月20日現在でアリゾナ、カリフォルニアを中心に12州から182人の患者と4人の死亡が報告されています。特に観光客も含め日本との交流が非常に盛んなカリフォルニア州には、昨年ウイルスが本格的に侵入しましたが、今年は5月中旬からウエストナイルウイルス感染による鳥の死亡が目立ちだしました。過去の流行の経験から「2年目現象」と呼ばれるように2年目に多くの患者が出ていることから、今夏はカリフォルニア州で患者が急増することが危惧されています。
ウエストナイルウイルスは我が国に生息する多くの蚊が媒介することが可能なことから、一度国内にウイルスが侵入すると大流行する可能性も少なくありません。しかしながら、万一アメリカからの帰国者、観光客が国内でウエストナイル熱(脳炎)を発症したとしても、患者(感染者)を刺した蚊から別の人が感染する可能性はありませんので、パニックになる必要はありません。
我が国では北米におけるウエストナイル熱の大流行を受け、平成14年10月に「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の施行規則の一部改正がなされ、ウエストナイル熱(脳炎を含む)は4類感染症に指定され、診断した医師は都道府県知事に届け出なければならないことになりました。また、流行予測のために死亡カラス情報の収集も平成14年12月から実施されています。
当衛生研究所では、全国の地方衛生研究所と国立感染症研究所(感染研)が昨年度に連携して立ち上げたウエストナイルウイルスの遺伝子の検査体制に参加し、更に患者血清を用いた血清診断も実施できるようにELISA法とよばれる検査法を用いた血清学的検査体制も整えています。また、ウエストナイルウイルスにウイルス学的には非常に似ている日本脳炎ウイルスの検査体制(遺伝子鑑別、血清中のHI抗体検索)も整えています。
- 病原体ウエストナイルウイルス(フラビウイルス属)
- 媒介蚊蚊を介した感染経路としては、カラスなどウエストナイルウイルスに感染したトリを刺した蚊がヒトを刺すことによる感染がそのほとんどだと考えられています。蚊を介したヒトからヒトへの感染は、ウイルスがヒトの抹消血へ大量に出現することは少ないとの理由からほとんど起こらないと考えられています。北米では30種類以上の蚊からウイルスが分離されていますが、我が国では私たちの身の周りにいるほとんどの蚊が(14種類ほどの蚊のうち、ヒト及びトリの両方を刺す性質を持つ11種類)ウエストナイルウイルスを媒介する可能性があるとされています。その中でも特にアカイエカ、チカイエカ、ヒトスジシマカが発生量・ヒト及びトリ嗜好性の点から重要視されています。その他の感染様式としては、2002年以降、アメリカ合衆国では、8例の輸血による感染が確認されていますが、現時点(日本国内での症例が発生していない時点)では、国内においては輸血による感染を心配する必要はまずありません。
- 潜伏期:3~15日
- 症状(現時点7月22日では、以下の症状が出ても、流行地域からの帰国者以外はウエストナイル熱(脳炎)の可能性は全くありません。)通常型は急激な発熱、頭痛、背部痛、めまい、発汗、約半数の症例で出現するとされる紅い小丘が密生した猩紅熱様発疹、それにリンパ節腫大などです。3~7日で解熱し、短期間で回復します。脳炎型は頭痛、高熱、頸部硬直、感覚障害、昏睡、戦慄、麻痺など重篤な症状が現れ、高齢者に多く、死亡率は3~15%とされています。
- 注意事項発生地域に渡航する場合は蚊よけスプレーを使用するなど、蚊に刺されないようにすること が重要です。
- 対策その地域に分布する媒介蚊を可能な限り減らすことが最も効果的
- 環境改善による蚊の幼虫発生源(空き缶や古タイヤ、それに一寸した水溜まりも含む)を無くす。
- 発生した蚊は殺虫剤を用いて殺す。
- 家屋の窓に網戸を設置することや、屋外にいる場合は長袖シャツ、長ズボンの着用、それに露出部分の皮膚にDEET(ジエチルアミド)などの忌避剤を塗るなどの防御方法をとる。
イエカ類は数km四方と広い範囲を飛翔することが知られており、カラスは毎日ねぐらと餌場を往復しているため、カラスからウエストナイルウイルスが検出された場合には相当範囲(数10km四方)にウイルスの活動が広がったと考えられます。
アフリカ、南アメリカ、東南アジア等を中心とした亜熱帯や熱帯地域の主として辺地で現在も大流行をしています。感染者は年間約3億人、死者は150~300万人で、そのおよそ95%がサハラ砂漠より南のアフリカで発生しています。我が国においても、2001年には109例、2002年には83例、2003年には77例、2004年には73例の患者報告があり、その大部分はアフリカや東南アジアの奥地などの流行地域で感染した人が日本へ帰国後、発症した輸入マラリアと考えられています。
- 病原体マラリア原虫(熱帯熱マラリア、三日熱マラリア、それに四日熱マラリア、卵形マラリアの4種)
- 媒介蚊ハマダラカ(主に日暮から夜明け直後までの夜間に人を刺します)
- 潜伏期間最新の米国CDCのデータ(米国では毎年1500~2000人のマラリア患者が報告されています)によると、マラリア流行地域を離れた後30日以内に発症する割合として、熱帯熱マラリアは90%以上、三日熱マラリアは50%程度とされています。それに、稀な型である卵型マラリア、4日熱マラリアはそれぞれ50%、70%程度とされています。すなわち、少なからずのマラリアが流行地域からの帰国後かなり時間が経ってから発症していることになります。特に、割合としては一番多い三日熱マラリアの半数以上の症例が帰国後1ヶ月以降、1年未満に発症していることに注意が必要です。また、感染を受けた後発症までには一般的には1~4週間はかかるとされています。
- 症状悪寒、戦慄と共に高熱が4~5時間続き、頭痛、嘔吐、関節痛をともないます。熱発作は三日熱型や卵型では48時間、四日熱型では72時間、熱帯型は明確な周期性を持っていません。特に、熱帯熱マラリアは命に関わることも少なくないので、注意が必要です。
- 注意事項東南アジアの観光地への旅行者は心配いりません。しかしながら、特に雨季にボランテ ィア活動などで奥地に入る人は、出来るだけ蚊に刺されないために、活動時間の検討、長袖シャツ、長ズボンの着用、忌避剤(虫さされ予防剤)の使用に加え、蚊取り線香や蚊帳の使用等を考慮する必要があります。マラリアを媒介するハマダラカは夕暮れから夜明け直後まで活発な活動をして人を刺しますので、この時間の屋外での活動を最小限にし、かつ、DEETを含んだ忌避剤の使用が必要です。サハラ砂漠以南のアフリカ(南アフリカ共和国の大部分を除く)で野外活動をするなど感染の危険が高い人には、発症予防のための抗生物質がありますので、専門家の医師等に御相談下さい。一般観光的なサファリツアー以外の冒険的サファリを計画している人達も、時季によってはマラリアの予防服薬が薦められることもありますので、専門家の医師等に御相談下さい。アフリカ、中南米、東南アジア等を中心とした亜熱帯や熱帯地域の主として辺地を旅行、辺地に滞在した人は、マラリア汚染地域を離れた後(日本へ帰国後)、半年以内に原因不明の発熱が出現した場合には、必ずこれらの地域への旅行、滞在を医師に告げて医療機関に受診することをお勧めします。
東南アジアや中・南米、それに、アフリカなどの熱帯地域に常在していますが、ここ数年世界的に発生数が激増し、昨年のWHOの推計では全世界で毎年50万人以上の患者が発生しているとされています。日本では、2003年に32例、2004年には45例の患者が報告されていますが、実際はその10倍程度の患者がいると考えられています。媒介する蚊(ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ)は、空き缶の水のような少しの水たまりでも発生するため、マラリアと異なりシンガポールなど衛生状態の良い都市部でも流行し、日本人旅行者が感染する機会もマラリアよりはずっと高いと考えられます。また、感染してもかなりの割合で症状が出ない不顕性感染で終わるとされていますが、どの程度の率かはよくわかっていません。マラリアを媒介するハマダラカが夕方から朝にかけて人を刺すのと対照的に、デング熱を媒介するシマカなどは日中に人を刺しますので、注意が必要です。発症すると手や足の皮疹、高熱、関節痛、目の奥の痛み等が出ますが、一部(3~5%)では出血傾向を主症状とする重症なデング出血熱となり、さらにデングショック症候群とうい重篤な症状に進む場合もあります。出血熱となった人の致死率は数%とされています。このような重症なデング熱であるデング出血熱は、2度目以降の感染で発症することが多いとされていますので、発生地域へ何度も旅行される方は特に蚊に対する防御策が必要です。
- 病原体デングウイルス(フラビウイルス属)Ⅰ型からⅣ型までの4種
- 媒介蚊ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ。感染者→媒介蚊→ヒトという感染環を形成します。
- 潜伏期間3~8日
- 症状発熱、頭痛、筋肉痛、関節痛、上肢内側に発疹が一時的に現れ、発症後3~4日後より限局した発疹(斑状紅斑)が体幹から末梢へと広がっていきます。デング出血熱になると出血傾向が強くなり、さらに重くなると頻脈、脈圧低下などの循環障害がみられ、ショック症状に陥ります。
- 注意事項媒介蚊は日中に活動するため、昼間の木陰などでも刺される危険があります。
南アジア~東南アジアを経て中国南部へ至るアジアモンスーン地帯に広く分布しています。流行は先ずブタの間でウイルス感染が拡がり、媒介蚊がブタを吸血し、再度ヒトを刺すことによってヒトの間に流行がみられるようになります。多くは不顕性感染ですが、感染者のうち、脳炎の発症率は300~3000人に1人と言われています。日本でも、昭和30年代には毎年500~1,600名程度の死亡者が報告されていましたが、現在では10人(死亡者は0~数名)以下の発生しかありません。また、重篤な後遺症が多くの回復者にみられると報告されています。
一方、WHOは世界では毎年少なくとも5万人以上が発病し、このうち1万人以上が死亡するとしています。世界で発生している日本脳炎の大多数が東南アジア(フィリピン、タイ、ヴェトナムなど)や南アジア(インド、バングラデシュ、ネパール等)の米作地帯でかつ豚を飼っている農家が集中している地域で発生しています。したがって、このような地域へ冒険旅行、ボランティア活動などで出かける人は、非常に有効かつ副作用のほとんどない日本脳炎の予防接種を受けることが勧められますので、一度専門の医師にご相談ください。
- 病原体日本脳炎ウイルス(フラビウイルス属)
- 媒介蚊コガタアカイエカ(主に夜間に活動します)
- 潜伏期5~15日
- 症状頭痛、発熱。重症例では意識障害、痙攣、昏睡がみられる。
- 注意事項日本脳炎ワクチンの接種をうけていない方は、蚊に刺されないよう気をつけることが大切です。また、雨季に東南アジアの稲作地帯へ一般観光客としてではなく、現地滞在型観光、ボランテイア活動などで出かける人は特に注意が必要で、出発前に予防接種を受けることが強く勧められます。
日本では馴染みのない疾患ですがトガウイルス科アルファウイルス属に属するチクングニヤウイルス(Chikungunya virus)が原因の、発熱および関節炎を主症状とする感染症です。アルファウイルス属にはこの他にも西部ウマ脳炎ウイルスなど、蚊によって媒介される病原ウイルスが知られています。チクングニヤウイルスは蚊によって媒介されます。イエカ(Culex属)、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)、およびヒトスジシマカ(Aedes albopictus)が媒介し、アフリカおよび東南アジア、南アジアに分布することが知られていました。
昨年夏以降、南西インド洋の島々(フランス領レユニオン、マダガスカル、セーシェル、 モーリシャスなど)で大流行し、20万人以上の患者と100人を超すチクングニヤ発症との関連が疑われる死者が発生したレユニオンには、蚊の征圧のためにフランス軍数千名が派遣され、また、ビーチリゾートで名高いこれらの観光地からフランス本土、ドイツなどヨーロッパへ帰国した人たちから100名以上の感染者が報告されています。
さらに4月21日にはインドからも集団発生が報告されています。
チクングニヤは発熱、悪寒、頭痛、嘔吐、関節痛、発疹などデング熱によく似た症状を引き起こしますが、デング熱とは異なり、通常出血やショック症状を起こすことはないとされていました。しかしながら今回レユニオンでの大流行ではチクングニヤ発症に関連すると思われる死者が100名以上報告されています。
予防ワクチンや抗ウイルス剤はなく、流行地では蚊に刺されないよう個人による十分な対策(薬剤塗布、長袖の着用など)が必要です。